ニュースの概要
地図情報サービス「THE MAP」が、開設10周年に合わせてウェブサイトを全面的に作り直した。御朱印、ロケ地、聖地巡礼、カフェ、温泉、城、道の駅、美術館など、12のジャンルごとに独自の地図を公開している。聖地巡礼マップには583か所、ロケ地マップには355か所の情報を載せた。特徴は、聖地やロケ地を単体で紹介するだけで終わらない点にある。近くの飲食店、観光施設、温泉などもあわせて地図上に並べ、訪れる先を見つけることと、旅の順路を組み立てることを一つの画面でできるようにしている。ジャンル別の地図を横断して眺められる構成に変わった点が、今回の刷新の核といえる。
引用元: THE MAPが聖地巡礼・ロケ地など12ジャンルの地図サイトを全面リニューアル(PR TIMES)
分析・見解
12ジャンルの地図を重ねて見せる意味
今回の刷新で目を引くのは、地図の数よりも、地図同士が重なり合う設計である。御朱印、城、温泉、道の駅といったジャンルは、これまで別々のサイトやアプリで探すのが普通だった。ところが旅行者の頭の中では、これらは「ひとつの休日」として混ざっている。朝は神社で御朱印をもらい、昼は道の駅で食べ、夕方に温泉へ入る。この流れを、ジャンルの壁を越えて一枚の地図で描けるようにしたのが、今回のリニューアルの価値だと考える。
583件と355件が示す、聖地巡礼の裾野の広さ
聖地巡礼は、アニメファンだけの趣味ではなくなった。映画やドラマ、ゲーム、小説、さらにはアイドルのミュージックビデオの撮影地まで、対象は広がっている。583件という数は、一つの作品が一か所を生むのではなく、作品が日本中に無数の足あとを残していることを物語る。ロケ地の355件と合わせて見ると、「作品の舞台」という切り口だけで千件近い訪問先が地図に並ぶ計算になる。
ただし数が多いほど、情報の鮮度が課題になる。作品の放送が終われば、店が閉じたり、撮影場所が立入禁止になったりする。地図サイトの信頼は、件数の多さではなく、更新の頻度と正確さで決まる。10年続いたという事実は、その地道な更新を続けてきた証拠でもある。
検索ではなく地図から旅を始める人が増えている
以前の旅行計画は、地名で検索し、観光名所の一覧から選ぶ形が主流だった。いまは逆に、地図を開いて「この辺りに何があるか」から始める人が増えている。スマートフォンの地図アプリで、現在地の周囲を眺めて行き先を決める行動が当たり前になったためである。
類似の動きは他にもある。大手の地図アプリが飲食店の口コミや写真を地図上に重ねたのも、同じ流れの上にある。独立系の地図サイトは、大手が拾いきれない「趣味の深い情報」で差をつけるしかない。御朱印や城といった切り口は、まさにその領域である。
地図は見る道具から、誘導する道具へ
これからの地図サイトに求められるのは、情報を並べることよりも、次の一歩を提案することだと考える。聖地の隣にある食堂を見せる。ロケ地の帰りに寄れる温泉を示す。こうした「ついで」の提案が、滞在時間と消費額を押し上げる。
一方で、人気地点に人が集中する混雑の問題や、私有地への立ち入りといったマナーの問題も避けられない。地図が誘導力を持つほど、その責任も重くなる。見せ方に配慮を織り込めるかが、次の10年の分かれ目になるだろう。
ビジネスへの影響
周辺店舗は地図への登録が集客の入口になる
聖地やロケ地の近くで商売をしている店は、地図に載っているかどうかで来店数が変わりうる。作品のファンは、現地に着いてから食事の場所を探すことが多い。地図上で聖地のすぐ隣に店名が見えれば、立ち寄る理由になる。まずは自店の周囲にどんな巡礼地やロケ地があるかを調べ、掲載の可否や情報の修正方法を確認することから始めたい。
自治体や観光施設は複数ジャンルの連携で滞在を延ばせる
自治体の担当者にとって、今回の事例は、観光資源を一つずつ宣伝する発想を見直すきっかけになる。城、温泉、道の駅、美術館が同じ町にあるなら、それらを一本の順路として提示した方が、日帰り客を宿泊客に変えやすい。具体的には、地域の観光情報を、地図サイトが取り込みやすい形で整えて公開しておくとよい。住所、営業時間、定休日、写真の利用条件を一覧にしておくだけでも、掲載のハードルは大きく下がる。
情報の更新体制を決めてから発信を始める
地図に載せる最大のリスクは、古い情報が残ることである。閉店した店に客が行ってしまえば、評判を落とすのは地図ではなく地域のほうだ。担当者を決め、季節ごとに掲載内容を見直す仕組みを先に作っておきたい。あわせて、混雑時の案内や、撮影時のマナーも一緒に掲載すれば、住民との摩擦を減らせる。集客と受け入れ体制は、セットで整えて初めて成果につながる。
