観光DX・人流データをどう整理するか
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本ページの比較表は、各社の公式サイト・公的資料で確認できた事業領域・公表実績などの事実項目を並べたものです。順位付けや優劣の判断は行いません。確認できなかった項目は「公式サイト参照」と表記しています。
観光DX(デジタルトランスフォーメーション)の現場では、「いつ、どこに、どのくらいの人が来たか」をデータで捉える人流データが、まちの運営の判断材料として使われるようになりました。自治体の観光施策では、混雑の時間分布、来訪者の来地・滞在時間の長さ、複数地の周遊状況などが、まちの計画や施策の評価に用いられます。一方で、データの取得方法(基地局統計、アプリのGPS、SNS投稿)、集計の粒度、統計加工の有無は提供元ごとに異なり、数字を比較するときには、取得方法が同じでない限り前提が一致しません。施策の効果を表す数値は推計である前提を明記し、確認できる公表値の範囲にとどめます。
観光庁は観光分野のDXの推進に取り組んでおり、令和3年度以降の実証事業、優良事例集の作成、生成AIを含むデジタルツール導入の支援を続けています(観光庁「観光DXの推進」・観光庁「観光分野のDX推進に向けた優良事例集」)。観光庁は観光DXを「旅行者の利便性向上・周遊促進、観光産業の生産性向上、観光地経営の高度化」の実現に資する取り組みとして説明しています。人流データ・AIツールはその中のデータ計測と支援の層です。
本ページでは、観光DXで使われる代表的な提供元(人流データ、SNS・ビッグデータ、生成AI旅程作成、DX人材育成、デジタルスタンプラリー構築)を事実項目で並べます。表は「事業者名 × 事実項目」の構成で、事実項目六列・事業者八者を扱います。各社の情報は、公式サイト・無料資料・公的機関の事例で確認できたもののみで、数字は公表値に限ります。
| 提供元・本社 | 対応領域 | 主な提供形態 | AI機能の公表 | 公表導入自治体・公的事例 | 公表実績 |
|---|---|---|---|---|---|
| 株式会社Agoop 東京都 | 人流・流動人口データ(アプリのGPS等を秘匿化・統計加工) | 流動人口データ提供、人流統計レポート(分析・可視化) | 公式サイト参照 | 公的データポータル(e-Statビッグデータ・ポータル等)へのデータ掲載を公表 | 公式サービスページで複数用途(来訪・滞在・From-To分析)を公表 |
| LocationMind株式会社 東京都 | 人流・空間統計データ(モバイルアプリの位置情報からの統計加工) | LocationMind xPop™ による人口・移動統計データの提供と解析 | 公式サイト参照 | NTTドコモが提供するアプリ利用者からの位置情報を統計的に加工したデータが基盤(公式サイトの説明) | 公式サイトで東大発ベンチャーとしての技術領域を公表 |
| NTTドコモ ビジネス 東京都 | 基地局統計による人口統計(モバイル空間統計®) | 1時間ごとの人口把握、観光客移動分析(複数区間)・人口流動統計(1区間) | 公式サイト参照 | 観光客分析・商圏分析・まちづくり等の活用分野を公式に列挙 | 動態統計(日本人)・外国人動態統計の提供を公式に公表 |
| LINEヤフー株式会社 (ヤフー・データソリューション) 東京都 | 行動ビッグデータ(検索・人流) | DS.INSIGHT(デスクリサーチツール):人流分析・トレンド分析 | 公式サイト参照 | 観光地の人流と検索データの分析記事(特定観光地の事例)を会社ブログで公表 | アプリ利用者からの位置情報を統計化した人流ビッグデータの提供を公表 |
| 株式会社日立製作所 東京都 | AI旅程作成・観光DXソリューション | 奈良県と共同開発したWeb版AI旅程サービス「ならいこ」(2024年12月提供開始) | キーワード選択からAIで旅程を生成する機能を公表 | 奈良県との共同開発・提供が公式に公表 | 提供開始日(2024年12月4日)を公式に公表 |
| 株式会社PKBソリューション 所在地:公式サイト参照 | デジタルスタンプラリー構築(モバイルdeスタンプラリー等) | 自治体・観光地・商業施設向けのスタンプラリー提供 | 公式サイト参照 | 官公庁・自治体・大手企業を中心にWEB公開事例を公表 | 導入事例ページを公式に公開 |
| 株式会社ワンズ (デジタルスタンプラリーfurari) 東京都渋谷区 | デジタルスタンプラリー(アプリ版+WEB版) | furari(フラリ):特典・ランキング機能、AI分析レポート | 日本初のAI分析レポートによる回遊データの自動可視化を公式に公表 | 自治体・商業施設・観光協会等を含む導入実績を公式に公表 | 導入実績900件以上、アプリ累計50万ダウンロード(2025年8月末時点)を公表 |
| JTB法人サービス (観光DX人材育成プログラム) 東京都 | 観光DX人材育成・自治体支援 | 自治体・観光関連組織の職員向けの観光DX人材育成プログラム | 公式サイト参照 | 自治体・観光関連組織向けの提供を公式に公表 | 公式サービスページで支援内容を公表 |
「公式サイト参照」は、本サイトの確認時点(2026年10月29日)で公表内容を確認できなかった項目です。表の数値は各社の公表値であり、確認URLと確認日は database/sources.md に記録しています。
各プレイヤーのプロフィール
01株式会社Agoop
Agoopは位置情報×ビッグデータを融合した技術開発をテーマに、複数のスマホアプリから取得したGPSなどの位置情報を秘匿化・統計加工した「流動人口データ」を提供しています(株式会社Agoop)。エリアごとに時間経過による来訪・滞在人口の推移や、From-Toなどの人々の流れを細かく把握できると公式に説明しており、人流統計レポートとして分析・可視化までを提供します。公的データポータルでは、ポイント型流動人口データが「数百万人規模の人の動きを把握できる位置情報ビッグデータ」として紹介されており、経済・観光・防災など幅広い分野での活用が説明されています。データの取得方法・匿名化・統計加工が公式サイトで説明されている点は、まち側が導入時に確認すべき前提を示しやすい姿とされています。
02LocationMind株式会社
LocationMindは東京大学の空間情報工学関連の研究を背景にもつ位置情報解析のスタートアップで、「LocationMind xPop™」という人口・移動統計データを提供しています(LocationMind xPop 公式ページ)。基盤はNTTドコモが提供するアプリの利用者から許諾を得て送信される携帯電話の位置情報を、統計的に加工したデータであると公式に説明しています。時間帯・地域ごとの粒度の細かさは、観光DX・商圏分析の文脈で評価される点とされています。導入地域の公表実績の確認は自社の情報だけでは限界があるため、自治体側の公表情報と併せて見るのが確実です。一方で、技術データの解析を中心に据えた事業である点は、まち側のデータ解釈を補佐する役割としても位置づけられます。
03NTTドコモ ビジネス
「モバイル空間統計®」は、ドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを利用した人口統計情報で、1時間ごとの人口を24時間365日把握できると公式に説明されています(モバイル空間統計 公式サイト)。全国の人口を基地局統計として捉えられるため、まちの状況の説明にそのまま使える点が特徴とされています。また、国内観光客に特化した「観光客移動分析(複数区間)」と、日常的な移動に焦点を当てた「人口流動統計(1区間)」の二種類の動態統計が提供され、どこからどこへ何人移動したかを捉えられるとされています。観光客分析、商圏分析、まちづくりなど幅広い活用分野が挙げられ、自治体のまちづくりや観光滞在化の支援に使われてきました。
04LINEヤフー株式会社(ヤフー・データソリューション)
ヤフー・データソリューションは、LINEヤフーの行動ビッグデータを活用したリサーチサービスで、DS.INSIGHTという分析ツールを提供しています(DS.INSIGHT 公式ページ)。ニーズ調査・人流分析・トレンド分析など幅広い分析が可能と公式に説明されており、検索キーワードと組み合わせた観光地の混雑・来訪者属性の分析が、観光施策の事前検証と効果確認に使う方向性として案内されています。広告用途に加えて、まちの情報発信の検証に使える点も特徴です。なお、分析対象画面の母集団が特定のアプリ利用者に依存するため、自治体側で読み替えの前提を押さえることが求められます。
05株式会社日立製作所
日立は自治体とのデータ連携やAIソリューションの分野で観光DXの事例を公開しています。奈良県と周遊・滞在型観光を促進するため、旅程をAIで作成するWebサービス「ならいこ」を共同開発し、2024年12月4日より提供を開始しています(日立「ならいこ」提供開始の発表)。ユーザーが興味・関心のあるキーワードを選択するとAIが旅程を生成する仕組みは、公的な説明でも確認できます。大規模IT事業者が自治体と連携して観光DXに関わる形は、単発のツール提供を超え、基盤と体制の共有に及ぶ点が特徴です。自治体側の観光DX計画に沿った形で、データとAIの基盤を整える方向性が示されています。
06PKBソリューション
PKBソリューションは官公庁・自治体・大手企業を中心に、スマートフォンを活用したデジタルスタンプラリーシステム(モバイルdeスタンプラリー等)を提供する事業者で、WEB公開事例を多数公表しています(PKBソリューション「モバイルdeスタンプラリー」)。スタンプラリーは、単にスタンプを集めるだけでなく、来訪後の周遊とまちの発信を設計する仕組みです。企画段階から目的に応じた提案を受けられる形が案内されており、集客・回遊・エンゲージメントの促進を支援するとされています。一方で、まちごとに導入する機能や計測の指標は異なり、統一のKPIは公表されていません。導入を検討する自治体側は回遊データの取り扱い方(個人情報や集計粒度の確認)を念頭に置いておく必要があります(詳細は page-06 を参照)。
07株式会社ワンズ(furari)
ワンズが提供するデジタルスタンプラリーシステム「furari(フラリ)」は、自治体・観光協会・商業施設向けの構築サービスで、導入実績900件以上と、「WEB版+アプリ版の同時開催」という柔軟性が特徴として公式に公表されています(furari 公式サイト)。オンラインでの開催だけでなく、多数のスタンプラリーの横断参加やランキング機能が、参加しやすい形式で来訪の周遊の設計に組み込まれています。2025年8月末時点でアプリ版の累計ダウンロードが50万件を突破したことも公表されています。AI分析レポートによる回遊データの自動可視化(日本初として公表のもの)は、まち側が来訪の設計に落とし込む際の判断材料として提供されています。
08JTB法人サービス(観光DX人材育成プログラム)
JTB法人サービスは、自治体や観光関連組織の職員に向けて「観光DX人材育成プログラム」を提供していることを公式に案内しています(JTB法人サービス「観光DX人材育成プログラム」)。デジタル技術を活用した観光振興と地域活性化を支援することを目的に据えたもので、DXとツールの考え方、データの取り扱い方を含めた実践的な学びの設計がされています。まちが自前のデータを活用する流れの中では、人材(まちの側が担う受け手)の確保が効果を継続させるかを決めるポイントであるとされています。人流データを持っていても効果が生まれない理由を説明する仕組みとして、まちの職員・観光協会・DMO職員が学び続ける設計に役割を置いています。
導入判断で確認したい視点
自治体が観光DXツールを導入するときの判断材料として、次の四点が公式情報から確認できます。第一に、データの取得方法です(位置情報をどの程度の精度・密度で捉えているか、統計加工の有無)。第二に、まちの計画と整合する分析対象の範囲です(地域・時間・属性の粒度)。第三に、個人情報と統計値の取り扱い方針が明示されているか。第四に、導入後の効果計測を継続できる人材と体制がまちの側にあるかです。公表の充実度は提供元ごとに異なり、まちが協働の条件とデータの取り扱いを説明しやすいかを見極めるための指標になります。
また、ツール導入と並行して、まち側に実務の相談窓口と技術の橋渡しを整えることが求められます。担当者がデータの解釈の前提を理解したまま運用できるかは、長期のKPI判断の設計に関わります。
まとめ
観光DXの人流データとAIツールは、まちが数値で説明する体制の一部として使うものです。データの前提と運用の見通しをまちの側できちんと共有しながら導入する準備が必要になります。
本ページの項目は、各社・各団体の公式サイト・公的機関の事例ページで確認できたもののみを記載しています。確認時点は2026年10月29日。確認URLの全リストは database/sources.md に残しています。
