ニュースの概要
VTuberグループ「ホロライブ」のファンを取材したインタビュー記事が、COVERedgeで公開された。登場するのは、配信者ゆかりの場所を訪ねる聖地巡礼を楽しむ人、ぬいぐるみ用の衣装を自作する人、親子でライブ会場に足を運ぶ人などである。応援の仕方はそれぞれ違い、画面の前で見るだけにとどまらない。移動し、作り、家族と共有するという、暮らしの中に広がる行動が語られている。本稿では、この「人それぞれのホロ活」という切り口から、推し活の現在地と、事業者が読み取るべき点を整理する。
引用元: 【ファンインタビュー】聖地巡礼、ぬい衣装作り、親子でライブ参加……人それぞれのホロ活のカタチ(COVERedge)
分析・見解
視聴から体験へ、ホロ活が広がる三つの方向
今回の記事で目を引くのは、ファンの行動が一つの型に収まっていないことである。聖地巡礼は「移動」、ぬい衣装作りは「制作」、親子でのライブ参加は「共有」にあたる。つまり、見る以外の行動が三方向に伸びている。
従来のアイドル文化でも、グッズ購入や遠征はあった。ただ、VTuberは画面の中で完結する存在だと思われがちだ。それでも現実の街や手作業、家族との時間にまで楽しみが及んでいる点は、この文化の厚みを示している。
ぬい衣装作りに見る、ファンが主役になる創作
ぬいぐるみ用の衣装は、市販品だけでは足りない。そこで裁縫が得意なファンが型紙を工夫し、小さな服を仕立てる。公式が用意していない領域を、ファン自身が埋めているわけだ。
ここに大事な点がある。公式グッズは「買って終わり」になりやすいが、衣装作りは完成までに数時間かかり、完成後も写真を撮って共有する楽しみが続く。手間をかけた分だけ愛着が深まる。心理学でいう「労力の正当化」、つまり苦労したものほど価値を感じやすい性質が、ここでは働いていると考えられる。コミュニティで作品を見せ合う場があれば、この循環はさらに回りやすくなる。
親子でライブに行く、世代をまたぐ応援の形
親子でライブに参加するという話は、ファン層の広がりを象徴している。かつてのオタク文化は、世代間で隠される場合も多かった。今は子どもが好きになった配信者を親が一緒に応援したり、親が先にファンになって子どもを連れて行ったりする例がある。
野球やサッカーの観戦が親子の共通の話題になってきたように、推し活も家族の会話を生む。共通の話題が一つあるだけで、日常の会話は増える。これは娯楽の価値として見過ごせない。なお、ライブ会場の年齢層が広がれば、座席、物販の動線、安全面の配慮といった運営側の課題も変わってくる。
聖地巡礼が地域にもたらす小さな経済
聖地巡礼は、アニメやドラマの舞台を訪ねる行動として知られる。山梨県の富士山周辺や、埼玉県秩父市の例のように、作品ゆかりの地が来訪者を呼んだ事例は多い。ホロ活でも、配信で話題に出た土地や店を訪れる動きが出ている。
一人ひとりの消費額は小さくても、飲食、交通、宿泊が積み重なると地域には無視できない収入になる。大切なのは、訪れたファンが気持ちよく過ごせる環境を、地元側が整えられるかどうかだ。撮影のルールや案内表示があるだけで、双方の摩擦は減る。
ビジネスへの影響
ファンの行動を一つの型で決めつけない設計
企業が推し活市場を見るとき、購入額だけを指標にすると取りこぼしが出る。今回のように、移動する人、作る人、家族で楽しむ人では、求めているものが違うからである。
たとえば、ぬい衣装向けに端切れや小さなボタンをまとめた手芸用品、親子向けの座席や休憩スペース、聖地巡礼向けの地図やスタンプラリーなど、行動ごとに別の商品やサービスが成り立つ。まず自社の顧客がどの行動に当てはまるかを、アンケートやSNSの反応から丁寧に拾うことが出発点になる。
ファンの創作を妨げない、権利と交流の整え方
ファンが作ったものを企業が活用する場面では、権利の線引きが欠かせない。二次創作のガイドラインを明文化し、何が許され何が許されないかを示すと、ファンは安心して制作できる。ホロライブを運営するカバー社も、二次創作に関する指針を公開している。
また、作品を見せ合う場を用意すると、コミュニティの結びつきは強まる。投稿イベントや展示スペースは、費用に対する効果が高い施策である。ただし、売上のために創作を利用していると受け取られないよう、まず敬意を示す姿勢が大事だ。
地域と組む際に先に決めておく運営ルール
聖地巡礼を地域振興につなげたい自治体や店舗は、来訪の受け入れ方を先に決めておくとよい。写真撮影の可否、混雑する時間帯の案内、ごみの扱い、近隣住民への配慮などだ。
小さな店でも、ファン向けの一言メニューや案内板を用意するだけで評判は変わる。無理に大きな投資をせず、ファンの行動を観察してから段階的に整えるのが現実的である。
